基本的に二世帯住宅は、間取りが特殊であったり、設備が複数必要だったりと「予算が余計にかかる」ものです。
では、予算が少なくて済むことがメリットのローコスト住宅で二世帯住宅を建てることができるのか、その間取りはどんなものになるのか?その疑問に答えるべく、人気ローコスト系ハウスメーカーの二世帯住宅間取りプランを集めて検証してみました。
ローコストの二世帯住宅間取りプラン①3階建てが標準の部分施設共有タイプ【タマホーム】
タマホームの二世帯住宅は「木望の家」という名前で、基本的には三階建てのプランになります。
タマホームの場合、「玄関を2つ設置する」など、分離型の二世帯住宅を建てるために必要な設備はオプションとなりますので、2階建てで完全分離型の二世帯住宅を建てるとなると、基本設定価格以上の費用がかかることになります。
やはり二世帯住宅を建てるには、ある程度の面積が必要になりますので、ローコストの2階建てですと難しい部分が出てくるのだと思います。
そのデメリットを回避するための3階建てということになるでしょう。
ビルトインガレージ付きの部分施設共有タイプ二世帯住宅の間取り
こちらは一階にビルトインガレージがついているタイプ。延床面積161.47㎡ (48.84坪)。
玄関は共有で、シューズクローク付き。ガレージから直接洋室にアクセスできるので、買い物した商品などを運ぶのには便利です。さらに一階の洋室には納戸がついており、トイレットペーパーなど買い置き品は、そのまま何度にしまっておけます。
2階は共有のリビングスペース。縦長のLDKと浴室、洗面室の水回りがまとまっています。リビングの隣には和室ではなく洋室があります。
3階はプライベートスペース。将来仕切れる子ども部屋とメインの寝室。寝室にはウォークインクローゼットもついています。
この間取りの問題は「親世代の居室はどこにするか?」でしょう。
1階の洋室がベストではありますが、ここはガレージの隣であり、子世代と生活時間が異なると、車の出入りなどがうるさいといった問題がありますし、せっかくビルトインガレージから直結する部屋なのにそのメリットを活用できなくなります。
では、2階の洋室を使ってもらおうかと考えると、リビングの隣ですし、それもまた問題です。
全体的に二世帯が暮らしやすい間取りにはなっていないというのが正直なところです。
完全分離タイプのルーフバルコニー付き3階建て二世帯住宅の間取り
こちらは3階建て、玄関やLDK,風呂などすべての設備が世帯別に別れた完全分離タイプの間取りです。延床面積158.15㎡ (47.84坪)。
1階は玄関が左右に分かれており、内部ドアでつながる方式。親世帯が1階に住むことになるでしょう。対面キッチンのLDKとお風呂+寝室とウォークインクローゼット。間取りとすれば1LDKのマンションといった感じでしょうか。
階段を上がって2階は子ども世帯のフロア。リビング階段直結のLDK。キッチンの後ろに浴室や洗面室がまとまっていて、かつダイニングの隣に洗濯物を干せるバルコニーがありますので、家事動線はしっかり短くまとまっています。
3階は子ども部屋2つとルーフバルコニー。敷地がそれほど広くない、密集地での建築を想定しているのか、広めのルーフバルコニーが設定されています。いわゆる屋上庭園ですが、これはこれで各世帯が集まれる憩いの場として楽しく利用できるかもしれません。
ルーフバルコニーはいらない、もしくは庭が別にあるという場合は、こちらのスペースにもう1つ部屋を作ってしまっても良いでしょう。
ローコストの二世帯住宅間取りプラン②中庭の共有スペースを活用【クレバリーホーム】
クレバリーホームの二世帯住宅は「円居(まどい)」というブランド名で、プライベート空間とコミュニケーション空間のバランス、つながりを強く意識している点が特徴です。
モデルプランは2階建て。玄関は共有タイプで、広めのシューズクロークがついています。
1階が親世帯のスペース。L字型のLDKと和室で、コートヤードと名付けられた「中庭」を囲むスタイルです。このコートヤードを各世帯共有のコミュニケーションスペースとして活用するのが、この間取りプランの特徴です。
LDKは広く、アイランドキッチンを採用して回遊性を高める工夫も。ダイニングから親世帯専用のウッドデッキに出ることもでき、セカンドリビングとしてリラックスタイムに活用できます。
1つ懸念されるのは、共有区間であるバスルームが1階の奥にあること。毎日必ず行う行動をわざわざ親世帯のフロアを通っていかないとならないというのは、なかなか気を使うかと思います。奥様がお風呂上がりのすっぴんで出てきたら、廊下で寝室から出てきたおじいちゃんと鉢合わせということも考えられる訳です。
2階は子世帯のスペース。対面キッチンを採用したLDKと主寝室、子ども部屋が1つずつ。バルコニーがなぜか3つあり、ダイニング直結、洗面室直結、3つ目は廊下ホールを活用した家事スペースにつながっています。
2階にも洗濯機置場があるというのは良いのですが、1階でお風呂に入り、洗濯物を2階に持ち帰って洗濯するということでしょうか?それとも、普段は1階で選択し、夜間などに洗濯機を回したいときは2階を使うということ?
その辺りの使いみちはそれぞれかもしれませんが、洗濯場所の隣に洗濯物干し場であるバルコニーがあるという設計はラク家事を実現する良いポイントだと思います。
ローコストの二世帯住宅間取りプラン③オーソドックスな完全分離型【ユニバーサルホーム】
【参照】ユニバーサルホーム/(カタログ取り寄せはこちらから)
ユニバーサルホームの二世帯住宅間取りプランは、良くも悪くも「オーソドックス」な感じ。安定感はありますが、目新しい特徴もありません。
1階は共有玄関で、シューズクローク付き。ホールの途中で階段があり、子世帯とフロアを分けています。
玄関から正面に見える和室はLDKと直結しており、回遊性は良し。対面式のLDKの隣にパントリーがあるのは、主婦にはうれしいポイントです。
寝室と和室に収納が豊富な設定になっています。
2階は子世帯のスペース。LDKを中心に3つの部屋がつながっています。
「必ずリビングを通るのでコミュニケーション抜群!」というのは、こういった間取りの決まり文句ですが、要するに「スペースが少ないからそうせざるを得ない」だけの話です。
みんなが集まるLDKとドア1枚しか隔てられていないというのは、プライベート空間としては少々不満が残るかも知れません。
1階にはパントリーがあるのに、パントリーが一番必要な子世帯のキッチンにはそれがないというのも、おかしいです。
ローコストの二世帯住宅間取りプラン④廊下を少なくしてスペースを広くとった部分施設共有型【ヤマト住建】
延床面積 144.91m²(43.83坪)。
ヤマト住建の二世帯住宅は、玄関や浴室などの一部施設を共有にした「部分施設共有型」の間取りになります。特徴は、できるだけデッドスペースである廊下をなくして、居室を広くしている点です。
1階は広めの玄関ホールにシューズクローク付き。共有空間ですがプライバシーが重視される洗面室と浴室は、親世帯のフロアとは分けてある点がポイントです。
親世帯フロアはLDKを中心に和室と寝室がつながったL字型。和室を開放すれば、より広々とした空間でくつろげます。
2階は子世帯のスペース。短い廊下でLDKと3つの個室をつなげており、プライバシーを確保しつつ、最大限に部屋を大きくとる工夫がされています。
2階にはほぼ「部屋しかない」という配置が潔いですね。
問題は、1階、2階共に家事動線があまりシンプルではないということ。ただ、洗濯室からすぐ横に階段がありますので、その点は移動が少なくて良いのかも知れません。
ローコストの二世帯住宅間取りプラン⑤コンパクトにまとめた完全分離型【アキュラホーム】
玄関やお風呂などを分けた完全分離型の二世帯住宅の間取りです。
玄関は2つあり、内部ドアでつながるタイプ。親世帯は、ウォークインクローゼット、寝室、LDKがすべてつながっており、回遊性のたかいワンフロア住宅。少々手狭ではありますが、居住性は悪くないでしょう。
子世帯は、1階に親の寝室を持ってくることで、2階のLDKを広くすることが可能になっています。
2階はLDKと将来仕切りができる子供部屋。バルコニーの前には室内干しができるスペースも設置されています。
メインの寝室でも6.5帖と決して広くはない点、また子世帯の収納が少ない点が問題かと思います。
以上、ローコストハウスメーカーの二世帯住宅間取りのご紹介でした!
まとめ/大手ハウスメーカーとの差は歴然。ローコストで二世帯住宅を建てるには工夫が必要
人気のローコスト住宅の二世帯住宅間取りプランを見てきましたが、どの間取りも「これはいいね!」と手放しで喜ぶことができず、何かちぐはぐ。「あれ?」と思う点が必ず出てくるなど、どにも消化不良なプランが多かった印象です。
やはり二世帯住宅はコストがかかりますし、プランニングする上で考えなければならない点も多くなります。その部分で、そもそも「住宅建築のコストを下げることが大きなメリット」であるローコスト住宅とは相性が良くないのではないかと考えられます。
大手ハウスメーカーのプランニングした二世帯住宅を【30坪のプラン】・【40坪のプラン】・【50坪のプラン】・【60坪のプラン】・【完全分離型ののプラン】と大きさ・タイプ別に分けた記事を用意してありますので、ぜひそちらと比較しながら検討してみてください。
確かに「なるほど、これなら二世帯でも暮らしやすい!」と素直に思える間取りプランがそろっています。